主 旨 2021年度 子宮頸がん
検診の運用を考える
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研究報告書
主 旨
わが国の子宮頸がん検診は、健康増進事業の一環として市区町村における対策型検診として行われており、その手法については「がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針(指針)」に基づき子宮頸部細胞診が採用されている。近年、細胞診に比較してより感度の高いHPV検査を用いた検診を対策型検診として導入した国も存在する。しかしながら、がん検診を取り巻く環境や検診の精度管理状況は国によって異なるため、精度管理体制が十分とは言えないわが国でHPV検査を用いた検診が検診としての効果が上げられる保証はない。国立がん研究センターより2020年7月に「有効性評価に基づく子宮頸がん検診ガイドライン2019年度版」が刊行され、検診方法として現行の細胞診単独法(推奨グレード:A)と並べてHPV検査単独法(同:A)、細胞診・HPV検査併用法(同:C)が示された。しかし検診の利益を担保するためにはアルゴリズム(検診結果毎にどのような検査をいつ行うかなどを定める)の構築と適切な精度管理が必須であるとも記載されている。
他臓器のがん検診では、検診結果が陽性とされた場合は医療機関で精密検査を行い、精密検査としてどのような検査を行えば良いのかが定まっている。しかるにHPV検査を用いた子宮頸がん検診については、アルゴリズムやその具体的な運用方法は未だ示されていない。HPV検査は病変ではなく感染を検出するリスク検査であるため、検診陽性者にはその時点では病変を有さないリスク保持者が多く含まれる。リスク保持者については長期的な追加調査を行い、経過観察が重要である。HPV検査を導入した検診では、検診陽性者に対する精密検査について検査内容や施行時期について多様性が出てくることは避けられない。そこで、わが国の現状を鑑みた上で、実現可能性のある適切なアルゴリズムを構築すること、および受診者がアルゴリズムを遵守できるような検診の運用体制の提案が求められた。
わが国の地域住民検診の内容の決定には、科学的根拠に基づくがん検診ガイドラインでの推奨に加え、厚生労働省で組織されるがんの検診あり方検討会において対象年齢や検診間隔、アルゴリズムなどの実際の運用方法を決定するという過程を経る必要がある。本研究は、厚生労働省での実際の運用を決める際の参考となる学術的見解を示すことを目的とする。
 
 
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